退院して、今の主治医の元に戻ります。
体重も増えたし、過食嘔吐も減ったので、できる事が増えアルバイトを始めます。
カラオケBOX、レンタルビデオ店。
そして、あることがきっかけで、実家を出ようと決めます。
(きっかけについては、別の記事に書きます。)
一度、一人暮らしに失敗しているので、実家の近くに住むことにしました。
家賃は母が始めは、払ってくれていましたが、派遣の仕事を見つけ、それなりに働けるようになったので、自分で払うようになります。
誰にも、食べ物の事で言われる事がなくなり、楽になりました。
過食のたびに、家族に怒られることもなく、狭いロフトがあったのですが、そこで好きな作家の本を読むのが幸せでした。
それでも、一週間に一度は実家に帰っていました。
私がいなくなったことで、家族は平和に暮らせるようになっている気がしました。
派遣の仕事は、自分で見つけて、1日8時間労働も出来るようになり、食べないと働けないので、それなりに食べていて、体重は40kgまで回復しました。
この頃に、生理が戻ります。
派遣先で今でも、時々ランチやお茶をする友達との出会いもありました。
ようやく人間らしい生活が出来るようになったと思いました。
仕事で失敗したり、怒られたり、嫌な思いをする事もありましたが、あの精神科へ入院する事に比べれば、なんともないです。
働く事が楽しかったので、派遣会社を2つと家庭教師のアルバイトもして、休みはあまりなかったです。
体重は増えましたが、過食嘔吐は止まらず、過食代のために働いている部分もありました。
一人暮らしを1年ほど続けて、仕事も出来るようになったので、初めて会社に就職しようと考え始めます。
会社説明会、転職フェアなどにも参加し、就職活動をしました。
もちろん、摂食障害の事は隠しての就職活動です。
不安も大きかったですが、奇跡的な出会いがありました。
ある転職フェアで、声をかけてくれた方がいて、ぜひ、うちの会社で働いて欲しいと言ってくれたのです。
仕事内容が、派遣で働いていた時と同じ職種で即戦力になるからと。
今でもその方の、キラキラした瞳が忘れられません。
とても美しく、頭がよく、輝いていました。
面接もすぐに行ってくれて、入社手続きも無事に終わり、研修が始まりました。
入社の時に恐れていた、健康診断があったのですが、特に問題はありませんでした。
研修は一週間で終わり、すぐに本格的な仕事になります。
とにかく必死で働きました。
毎日、行く場所があり、私を必要としてくれていることが、嬉しくて幸せだったのです。
仕事の合間に過食嘔吐するというハードな日々でしたが、仕事は楽しくてやり甲斐がありました。
定期的な研修も多く、私の価値観もだいぶ変わりました。
大きな外資系の会社だったので、実績さえ上げれば公平に評価してくれます。
先輩や上司はみんな、ブランドのバッグを持ち、高級腕時計にキラキラしたアクセサリーを身につけ、華やかな理由が分かりました。
成績が良ければ、毎月のお給料も、ボーナスも信じられないくらい、いただけるのです。
入社1年目には、新人賞全国3位になり、入社2年目には年収が1100万円になっていました。
今までは、過食代を賄うので、精一杯でしたが、海外旅行へ行ったり、美容にもお金を使う事が出来るようになりました。
上司にも同僚にも恵まれ、摂食障害を抱えながらも、仕事をこなし、充実した毎日を送れました。
しかし、辛い事も多かったです。
毎月のノルマに追われ、ビジネス携帯は休みの日も鳴り続け、クレーム処理、お客様のフォローなど仕事漬けの毎日でした。
仕事もハードでしたが、それ以上に辛かったのは、摂食障害の方です。
会社の人に摂食障害だと、バレてしまうのが怖くていつも緊張していたし、仕事の合間に過食嘔吐をするので、倒れそうになる事も多かったです。
会社の人の前では、なるべく普通に食べ、体重も落とさないように気をつけていましたが、太る恐怖と過食嘔吐で精神的にも肉体的にもいつもギリギリの状態でした。
それでも、体重と同じで、頑張れば頑張った分だけ、結果が出る快感を知っていたので、心と身体の声は無視して、ひらすら働きました。
その為、体調を崩して休む事も多かったです。
声が出なくなったり、胃腸炎や虫垂炎にもなりました。
忙しく働いている時、その会社で出会った男性と、運良く(笑)結婚します。
摂食障害なので、結婚は諦めていましたし、拒食や過食嘔吐の症状を理解できる人などいないと思っていました。
高校生の時に摂食障害が原因で振られた過去があるので、彼氏に摂食障害の話をしたことは、ありませんでした。
でも、秘密にして付き合うのも辛いのです。
夫には付き合う事になった時に、
「私は摂食障害という病気です。太るのが怖くて、食べられなかったり、たくさん食べて吐いたりしています。この病気は治るか分からないし、今より悪くなる可能性もあります。それでも、いいですか?」
と正直に伝えました。
夫は
「摂食障害って、う〜ん。触ると何かダメなの?」
と言ってきました。
摂食障害を接触の障害だと勘違いしていたのです。
「触る接触じゃなくて、食べる方だよ」
と言うと
「君がたくさん食べて、吐いているのは知っていたよ。ストレスを抱えてるんだなと思ってた。そうか、摂食障害なんだね。だから、そんなに痩せているのか。大丈夫だよ、僕の母も鬱になった事あるし、精神的な病気のことは知ってるから」
と言ってくれたのです。
素直に嬉しかった。と同時に不安もありました。
実際、一緒に暮らすとなると、拒食や過食嘔吐を目の当たりにして、いつか捨てられるんじゃないかと思っていました。
私と摂食障害 7 に続きます。