「食べたい」と「過食したい」は違う
摂食障害になると、「食べたいもの」が分からなくなります。
そして、「食べていいもの」「食べてはいけないもの」が出来てきます。「食べていいもの」は低カロリーの野菜やきのこ類、こんにゃく、海藻など。「食べてはいけないもの」は炭水化物や糖質、脂や揚げ物など。
私は拒食が一番酷い時、白菜と海苔しか食べられませんでした。海苔は1日に40枚くらい食べていたので、βーカロテンの過剰摂取で指先や手のひらが黄色くなりました。
左が私です。友達と比べて明らかに黄色い手。
太るのが怖いので、「食べてはいけないもの」がどんどん増えていき、フリスク一粒も怖くなりました。
拒食が限界に達したとき、猛烈に食べたい衝動に駆られました。気を抜くと食べたい欲求が爆発しそうで、気が抜けず、休めない、座れない、横になれない、眠れない日々が続きます。
摂食障害になり、初めて受診した心療内科のカウンセラーの方に、好きなだけ食べて吐いていいと言われ、張り詰めていた糸がプツリと切れ、過食嘔吐になります。
家中の食べ物を食べつくすのです。冷蔵庫はもちろん、砂糖やバターもそのまま食べるほどに。それだけ身体が飢えていたのです。
過食嘔吐も初めの数年は、菓子パンやお菓子、揚げ物や麺類を過食していましたが、それは「食べたい」からではなく、詰め込みやすい、吐きやすいものでした。
早く詰め込み、早く吐けるもの。つまり「過食したいもの」です。
ご飯は米粒一つでも、吐けないと怖いので食べられませんでした。
「食べたいもの」は分からず、野菜と海苔ばかり。野菜も糖質が高い、人参やかぼちゃ、蓮根、ジャガイモは食べられませんでした。母が一生懸命に作ってくれた、料理も隠れて捨てていました。お母さん、本当にごめんなさい。
過食嘔吐が始まり、2年目くらいの時、ようやく「食べたいもの」が分かるようになります。同時に空腹を感じることも出来るようになりました。
拒食を続けていると、空腹も満腹も分からなくなります。
本当は過食になっても嘔吐がなければ、空腹や満腹も分かるようになり、回復が早かったのかもしれません。でも、私には太ることが何よりも怖く、太るなら死んだ方がマシだと思っていたので、嘔吐はやめられませんでした。無理に吐くので、喉や食道が切れて吐血しても吐いていました。
吐血した私に気がついた、祖母が救急車を呼んだ時も、救急車の中で血と一緒に胃の中のものを全て吐きました。
喉は内出血して赤い斑点がたくさんでき、真っ赤になりました。異常です。(今も過食嘔吐している私は異常ですが)
自分で料理をするようになり、「食べたいもの」と「過食したいもの」にも変化が出てきました。
今、「食べたいもの」はアイスと夫が買ってきた、沖縄土産のレアケーキかな。
これも摂食障害の特徴かもしれませんが、「許可食」=「食べたいもの」になります。一度、食べて大丈夫だったものが、また食べたくなるので、同じものを繰り返し食べます。「食べたいもの」=「安心して食べられるもの」なのかもしれません。
「過食したいもの」は大量の野菜や、自分で自由に作ったものです。カロリーを気にせず食べられるもの。不思議と菓子パンやお菓子は、「過食したいもの」ではなくなりました。
お腹が空いて、「食べたい」と強迫観念によって「過食したい」の気持ちは大きく異なります。
「過食したい」は味が濃いものが多い気がします。飢餓状態で過食するとドーパミンが大量に分泌されるようです。過食する時はすごい力が出るんです。これが依存ですね。止めたくても止められない。
理解されにくいですが、過食嘔吐は辛く、苦しいです。好きでやっている訳じゃない。コントロールが難しいんです。泣きながら過食嘔吐している方もいると思います。どうか、過食嘔吐していることを責めたり、怒ったりしないで欲しい。
自分を責めないようになりたいです。
今は「許可食」が増えたので、「食べたいもの」も少しずつ分かるようになり、過食衝動も減ってきています。
もっと「許可食」が増えれば、身体の飢えは少なくなり、過食衝動ももっともっと減るはず。体重は増えると思うので、どこまで自分の体重を受け入れることが出来るかが、今後の課題です。